産業廃棄物管理票(マニフェスト)
産業廃棄物の適正な処理を推進する目的で定められた廃棄物処理法において、排出事業者は、その処理の流れを最終処分まで確認する義務があります。
産業廃棄物管理票は、マニフェスト・マニフェスト伝票とも呼称され、不法投棄などを未然に防ぐために、排出事業者がその処理を外部に委託する際に交付する専用の伝票のことで、この全体の仕組みのことをマニフェスト制度と言います。
また、個々の産業廃棄物の運搬・処分の状態を明らかにするもので、委託契約に基づき交付されるため、産業廃棄物管理票のみ交付することはできません。
交付や返送の時期なども法律で定められているため、記載事項や交付そのものに虚偽があると罰せられますので、十分注意してください。
マニフェスト制度とは?
マニフェスト制度は1990年度より厚生省(現:環境省)の指導でスタートし、当初は、健康・環境被害を引き起こす特別管理産業廃棄物のみが対象でしたが、2000年から適用範囲がすべての産業廃棄物に拡大しました。
マニフェスト制度では、排出事業者は、産業廃棄物管理票の交付後、90日以内に委託した産業廃棄物の中間処理が完了したことを確認し、特別管理産業廃棄物の場合は、60日以内です。
また、最終処分に関しては、産業廃棄物管理票の交付後180日以内に確認する必要があります。
中間処理が行われない場合は、交付後90日以内(特別管理産業廃棄物の場合は60日以内)に最終処分を確認しなければなりません。
なお、上記の確認ができない場合は、排出事業者は処理を委託した産業廃棄物の状況を把握した上で適切な措置を講じつつ、確認ができていない旨を都道府県や自治体等に報告しなければなりません。
産業廃棄物管理票の内容
産業廃棄物管理票には、以下の11項目を漏れなく記載し、各業者へと交付する必要があります。
項目に一つでも漏れがあると、正式なマニフェストとして認められませんので注意しましょう。
- 産業廃棄物管理票の交付年月日及び交付番号
- 氏名又は名称及び住所
- 産業廃棄物を排出した事業場の名称及び所在地
- 産業廃棄物管理票の交付を担当した者の氏名
- 運搬又は処分を受託した者の住所
- 運搬先の事業場の名称及び所在地並びに運搬を受託した者が産業廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管を行う場所の所在地
- 産業廃棄物の荷姿
- 当該産業廃棄物に係る最終処分を行う場所の所在地
- 中間処理業者(次号に規定する場合を除く。)にあつては、交付又は回付された当該産業廃棄物に係る産業廃棄物管理票を交付した者の氏名又は名称及び産業廃棄物管理票の交付番号
- 中間処理業者(当該産業廃棄物に係る処分を委託した者が電子情報処理組織使用事業者である場合に限る。)にあつては、当該産業廃棄物に係る処分を委託した者の氏名又は名称及び第8条の31の2第3号に規定する登録番号
- 当該産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その数量
産業廃棄物管理票の構成
産業廃棄物管理票は、A票、B1票、B2票、C1票、C2票、D票、E票の7枚複写の伝票から構成されています。
排出事業者、収集運搬業者、処分業者がそれぞれ保管できるように、直行用は7枚綴、積替用は8枚綴になっています。
また、こちらは紙の用紙ですが、後述する電子マニフェストも基本構成は変わりません。
排出事業者 | A票(排出時の自社控え) | 排出時に必要事項を記入し収集運搬業者の受領サインの後、A票のみを切り取ります |
---|---|---|
B2票(運搬終了の確認) | 収集運搬業者が運搬を完了したとき、お手元に届きます | |
D票(処分終了の確認) | 中間処理業者が処分を完了したとき、お手元に届きます | |
E票(最終処分終了の確認) | 最終処分が完了したとき、お手元に届きます | |
収集運搬業者 | B1票(運搬終了の自社控え) | B1票:運搬終了時に終了年月日を記載しB1票とB2票を切り取ります(B2票は排出事業者へ送付) |
C2票(処分終了の確認) | C2票:中間処理業者が処分を完了したとき、手元に届きます | |
中間処理業者 | C1票(処分終了の自社控え) | C1票:処分終了時に終了年月日を記載しC1票、C2票、D票を切り取ります(C2票は収集運搬業者、D票は排出事業者へ送付) |
(参照:5分でわかるマニフェスト|廃棄物処理のことならリバーより)
産業廃棄物管理票の運用・管理
交付単位
原則的に、産業廃棄物の「種類」「運搬車」「運搬先」毎で作成。
(例:1台の運搬車で2種類の廃棄物を運搬する場合は2通交付。)
返送・確認
運搬・処分が完了したら、B2/D票は90日以内に、E票は180日以内に排出事業者宛に返送。
保存
交付した排出事業者と受け取った処理業者双方で、マニフェスト送付日または送付を受けた日から起算して5年間保管。
マニフェストは運用と管理についても、細かい規定が定められています。
期日までにマニフェストが返送されない場合、収集運搬業者、処分業者に状況を確認する必要があり、
その後は状況に応じて必要な措置を講じるとともに、都道府県に「措置内容報告書」を提出しなければなりません。
規定に従わなかった場合、廃棄物処理法違反とみなされ、刑事処分に処せられるので注意しましょう。
マニフェストに係る義務違反
措置命令と罰則マニフェストの不交付や不法投棄などをはじめとした違反行為には、刑事罰が科せられます。
また、違反行為が行われた場合、都道府県から措置命令が下されることがありますが、
これに従わない場合も、さらに刑事罰が科せられます。
違反行為 | 罰則 | 対象者 |
---|---|---|
廃棄物の不法投棄 | 5年以下の懲役または1千万円以下の罰金(法人においては3億円以下の罰金)若しくはその両方 | 排出事業者及び違法行為者 |
マニフェストを不交付・虚偽等 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 排出事業者及び処理業者 |
契約書を作成せず処理 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金若しくはその両方 | 排出事業者及び処理業者 |
無許可業者へ委託処理 | 5年以下の懲役または1000万円以下の罰金若しくはその両方 | 排出事業者※無許可営業については処理業者にも罰則 |
特別管理産業廃棄物管理責任者設置義務違反 | 30万円以下の罰金 | 排出事業者 |
(参照:廃棄物の処理及び清掃に関する法律 | e-Gov 法令検索より)
産業廃棄物管理票の種類
先述しましたが、産業廃棄物管理票には紙マニフェストと電子マニフェストの2種類が存在します。
共に産業廃棄物の流れを確認して、適正な処理を行うことを目的としていますが、
細かい運用方法など変わってきますので注意しましょう。
紙マニフェスト
システム導入などの環境整備不要で、用紙さえあればすぐに作成できるため、交付に手間がかからないメリットがありますが、記入漏れやミス・紛失のリスクがあります。
また、5年間の保管や、毎年の報告書提出義務が発生します。
用紙は、(公社)全国産業資源循環連合会などが用紙を販売しています。
電子マニフェスト
紙のように物理的紛失のリスクが無く、システム上でいつでも入力や確認ができるため、事務処理が効率化されますが、導入費用がかかるうえに、排出事業者から収集運搬業者、処分業者までのすべての関係者がシステムを導入する必要があります。
こちらは、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターがサービスを運営(JWNET)しています。
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